小学生からヘディング練習はするべきではない?|ヘディングが脳に及ぼす影響とは

こんにちは。
ゆーきコーチです。
茨城県水戸市でサッカーコーチをしています。

サッカーで当たり前にように行うヘディング。
近年、脳に影響を与える危険性があるという研究報告などから注目が高まってきています。

ヘディングの練習は小学生ではやらない方が良いのか?

こんな疑問を持たれている方も多いと思います。

これについて、結論からいうと小学生は危険性が伴わないヘディング練習をするべきです

この記事ではヘディングをすることで起こる危険性。
そして、危険性を回避するための練習方法を解説します。

どういった危険性があるのか?

まずはじめに、サッカーのヘディングにどのような危険性があるのか知りましょう。

  • 脳震とう
  • 後遺症

・脳震とう
米国神経学会(AAN)が2017年2月に紹介した論文では「ヘディングを多く行う選手はそうでない選手に比べて脳震とう症状を有するリスクが3倍上昇する」との研究報告が出されています。

Jリーグや海外サッカーの試合を観る人であれば、ヘディングの競り合いで頭と頭がぶつかる“バッティング”により選手が倒れ込むシーンを見たことがある人もいると思います。
脳震とうは24〜48時間以内に頭痛や嘔吐、手足の痙攣や痺れなどの症状がでるため、少なくとも24時間は選手を1人だけにしてはいけません。
そして、脳震とうで最も怖いのは“セカンドインパクト症候群(1度目の症状が残るうちに2度目の脳震とうを起こすこと)”です。
死亡率は50%以上とも言われ、生存しても重い後遺症を残す危険性があります。

ある日の中学生の試合でこんな光景を目にしました。

ヘディングの競り合いでの接触で倒れ込む選手。
頭を抱えながら立ち上がる選手に対して…
「やれるか?」と聞くコーチ。
「はい、やれます」と答える選手。
そして、その後もプレーを続行する…

立ちくらみ?脳震とう?
よく混同されることが多いため慎重に判断するべきです!

・後遺症
中学生くらいになるとロングボールも蹴れるようになり、必然的にヘディングをする機会も多くなるため、選手・コーチともに危機感を持つことが大切です。

2002年のある選手の死をきっかけに、「ヘディングによって後遺症がでる」という危険性があることが注目され始めました。

59歳で亡くなった元イングランド代表サッカー選手のジェフ・アストル氏。
2014年にアストル氏の脳を分析したところ、CTE(慢性外傷性脳症)で亡くなっていたことが判明。
彼はキックよりもヘディングによるゴールが多かったことで有名な伝説的なフォワードで、国の検死官がアストル氏の死因はサッカーで繰り返しヘディングをしたことによるものだと結論づけたそうです。

その後、様々なところでヘディングの危険性についての研究が行われるようになります。

2015年 パデュー大学
サッカーのゴールキックをヘディングした時の衝撃はアメリカンフットボールのタックルやボクシングのジャブがクリーンヒットした時の衝撃と同じくらいあることが判明。

2017年 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとカーディフ大学
6人の元サッカー選手の脳を死後に調べたところ、脳にアルツハイマーの兆候が現れ、その内4人にはCTEの形跡が見られたそうです。

2018年 ブリティッシュ・コロンビア大学
ヘディングをすると脳細胞にダメージを及ぼすタンパク質の血中レベルが上昇するとの研究結果が発表されました。

2019年 グラスゴー大学
プロサッカー選手は認知症など神経性疾患で死亡するリスクが一般人よりも3倍以上も高いとする研究結果を発表。
ヘディングが直接の原因という因果関係は証明されていないものの、ヘディングを繰り返すことで発達中の子どもの脳に影響を与える危険性を訴えたものです。

こういった研究報告を受けて、国際サッカー連盟(FIFA)が今後どのような対策を講じるのか、はたまた何も策を講じずに現状維持でいくのかは別にして、少なからず危険性が伴うということをそれぞれの国や地域で認知すべきです。


どのようにヘディング練習をするべき?

試合のルールでヘディングそのものが禁止とならない限り、永遠の課題となります。
なぜなら、ヘディングの競り合いの勝敗は、試合の勝敗に影響を及ぼす要素の一つだからです。

では、どのように練習をしていけば良いのでしょうか?

  • コーディネーション能力を鍛える
  • ボールを変える
  • 回数を制限する
  • シールディングを活用する

・コーディネーション能力を鍛える
ヘディングの練習=ヘディングをすることだけではありません。
そもそも、質の高いヘディングをするには質の高い体(運動神経)が必要です。
ヘディングもキックやドリブルと同様にコーディネーション能力が低いと習得することが出来ません。

ヘディングに必要な能力とは?

小学生で伸ばしてほしいものは“定位能力”です。
これは、相手やモノに対して自分がどこにいるのか、どれだけの距離があるのかを正確に把握するコーディネーション能力(距離感や空間認知)のことです。
この能力が乏しいと、飛んできたボールに対して落下地点が把握できずに、そもそも頭にボールを当てることすら出来ません。

この能力を伸ばすには、ヘディングの練習をしなくてもキャッチボールやバドミントンでも鍛えられます。

[参考記事]運動神経は8歳までが大切!?知っておきたいコーディネーション理論

・ボールを変える
実際にヘディングをして、頭のどの部分に当てたらコントロールしやすいか感覚を掴みたい時は、衝撃の少ないボール(ゴムボールやスポンジボール)で行いましょう。

ちなみに、ヘディングは落下地点を予測してタイミングを合わせることも大切なので、風船のような対空時間が極端に長くなるものはおすすめできません。

・回数を制限する
すでにアメリカでは11〜13歳はヘディング練習の制限。
10歳以下は練習も試合もヘディング禁止というガイドラインがあります。

また、2020年2月にはイングランドサッカー協会(FA)がヘディングの練習禁止を打ち出しました。
11歳以下までのチームは原則禁止として、12歳以下は最大5回までの練習を月に1回。

日本ではそういったガイドラインはまだありません。
しかし、子どもたちの将来を考えて、サッカーボールを使用してヘディング練習をする場合は、必ず回数を制限しましょう。

・シールディングを活用する
ヘディングにおける“シールディング”とは、腕を使い相手の自由を奪い競り合いに勝ちやすくする目的があります。
また、勝つ目的だけではなく安全面を考慮する目的もあります。
ただし、肘が相手に強く当たるエルボーはもちろん、過度に押さえつけるとファウルとなることがあるので注意すべし!
画像のように腕を使ってヘディングを行い、慣れてきたらジャンプヘディングをしたり、競り合いの中で練習してみましょう。

 


 まとめ

歴史を振り返ると、後ろからのタックルについて、死角からのタックルのため回避が困難となり大怪我につながるため禁止。
人体に大きな危険が伴うため、イエローまたはレッドカードの対象となりました。

同じように、ヘディングも人体に大きな危険が伴うものとして禁止される日が来るかもしれません。
しかし、ビジネスとしても成り立っているサッカー界において、ヘディングが無くなることは現実的に考えられません。

ヘディングはサッカーが持つエンターテイメントの要素の一つと言えるからです。
例えば、クリスティアーノ・ロナウド選手の豪快なヘディングシュートを見てファンは熱狂します。

実際にFIFAは研究報告が発表されても「研究結果は確定的なものではない」として禁止することはしていません。

そういった中で大切なのことは、サッカーをしている子どもたちの周りにいる大人が危険性を認知して、勝利以上に優先すべきものを見極める知識を持つことです。