小学生に『戦術』は教えるべきじゃない?

こんにちは。
ゆーきコーチです。
茨城県水戸市でサッカーコーチをしています。

 

戦術は小学生に教えるべきなのだろうか?

指導者はもちろん、サッカーママ・パパもこんな疑問を持っている方は多いと思います。

ここでは、そんな疑問を解決するべく、戦術の定義や必要性を解説します。

 

小学生にも戦術を教える必要があるのか?

結論からいうと選手が勝ちたいのなら、必要なのが必然です。

戦術とは?

そもそも戦術とはなんでしょうか?
それには、戦術の目的が何なのかを考える必要があります。

目的はズバリ試合に勝つためです。
勝つためには「ゴールを奪う」と「ゴールを守る」が基本的な考えです。

※ウィキペディアでも目的は勝利

引用:フリー百科事典『Wikipedia』

戦術は作戦戦闘において戦力を運用する術策であり、軍事学の根幹的な学問でもある。その形態から事前に準備調整が行われる計画戦術と、応急的に行われる動きの中の戦術がある。戦術の究極的な目的とは戦闘での勝利であり、戦略による指導の下で戦術は戦果を最大化しようとするために実行される。

軍の戦闘ではなく、サッカーで例えます。
戦術は大きく3つに分類されます。

  • 個人戦術
  • グループ戦術
  • チーム戦術

・個人戦術
名前の通り個人における戦術(2人も含む)。
自分自身をマークしている相手ディフェンスをはがす動作など(デスマルケ)。

・グループ戦術
以下の2つに分類されます。
セクトリアル
3人から4人までのユニットで一つのラインまでの領域。
最終ラインでどのようにボールを保持するのかなど。
インテルセクトリアル
5人以上のユニットで、最低でも2つのラインで構成されている。
ビルドアップ時に最終ラインからボランチなどの中盤へどのようにパス供給をするのかなど。

・チーム戦術
11人(8人制サッカーなら8人)全体の領域。
1ー4ー4ー2のシステムでどのように攻撃をするか、プレッシングはエリアごとにどうするのかなど。

 

戦術と哲学の違い

「スペインのFCバルセロナの戦術は?」と聞かれると、ほとんどの人が『パスサッカー』や『ポゼッションサッカー』と答えるでしょう。
これは正解とも言えますし、不正解ともいえます。

近年は『ハイプレス』という戦術の質が向上してきました。
※ハイプレス(高い位置でのプレス)とは相手陣地にボールがある時に積極的にボールを奪いにいく戦術。

それによって、長い時間ボールを繋ぐことのリスクが高まってきていますが、バルセロナは短いパスを繋ぎます。
自陣ゴールに近い危険なエリアでも短いパスで繋いでいくプレーも見られます。

なぜ、危険をおかしてまでパスを繋ぐことにこだわるのでしょうか?

それは、相手チームのハイプレスをもろともせず、華麗なパスワークで前進することで、世界中のファンを魅了するからです。
このように、勝つこと以上に勝ち方にこだわるのは『哲学(スタイル)』です。

ただ、一方でクラブのスタイルをプレーで表現できる選手を獲得している方針を考えると、そのスタイルこそが勝つための最善の策、つまり『戦術』ともいえます。

余談ですが、最近はあまり良い状況とはいえないバルセロナについて、イタリアの名称ファビオ・カペッロが以下のように評したそうです。

引用:Qoly Football Web Magazine

「以前のバルセロナが好きだった。

現在はあまりにも長くボールを繋いでおり、相手ゴールの近くに進まない。そして天才リオネル・メッシが魔法をかけてくれることを祈るだけだ。

私はベンチで賢さをみせる監督が好きだ。選手の特性を理解し、戦術的な作戦に適応させ、最高の選手たちに合うスタイルを構築する監督が。

グアルディオラも大きく変化している。

マンチェスター・シティのプレーを見ればわかるだろう。高いポゼッション率を維持し、パスゲームをしていた時期は終わった。

シティのプレーはよりダイレクトに、アグレッシブに、高い速度で試合をするようになっている。彼らは常に相手のゴールを見ている。

彼は理解しているのだ、変化をし続けなければならないと。勝ち続けたいなら進化しなければならないのだとね」


戦術=楽しめない?

そもそも、サッカーをしていて「勝ちたい」となるのは自然なことです。

しかし、「勝つ」のようなフレーズがでた瞬間に敏感に反応する人が多いように思えます。

まず、私が悪しき日本文化と感じるのが『ゼロイチ思考』です。
「競争すると負けて傷つく子どもがでてくる…」という考えが広がってくると、運動会で順位をつけなくするとか…

日本のサッカー文化でも同じような現象があります。

「楽しむことが大切」といった考えが広まってくれば、「勝ちにこだわる」という考えに反対する人がでてきたり…

 

「試合の目的=勝つ」は楽しめない?

勝つことを目的に試合をしては楽しめないのではないだろうか…

『遊び』を例にあげてみます。

小学生が集まって『缶けり鬼ごっこ』をやるとします。
鬼が一人、隠れる子どもが5人いたとします。

さて、5人はどうするでしょうか?
たぶん、何かしら作戦を考えるのではないでしょうか?

…最初は5人でなりふり構わずに缶を蹴りにいくかもしれません(笑)
でも上手くいかなかったら「どうすればいいんだろう?」と考えるはずです。

目的は?
鬼に見つからずに缶を蹴ること、つまり『勝利』するためです。

そして、それを試そうとするときはワクワクしながら。
実際に上手くいったときには、大はしゃぎする姿が容易に想像できます。

 

ルールが分かると、勝ちにこだわる!

これは私の実体験です。
小学生よりも年齢がさらに下の保育園児のサッカー教室のこと。
最初はルールも分からないし、ボールを扱うのも大変…

でも、こうすればゴールになって…
「相手よりもたくさんゴールすれば勝ち」というルールを理解してくると?
男の子・女の子、サッカー経験の有無に関係なく、みんなが夢中になって勝ちにこだわり始めます。
さらに理解してくると?
「ゴール前は〇〇君が守って!」とポジションを決めたりもします。

夢中になっている瞬間はめちゃくちゃ楽しそうで、情熱を感じることも。

そういった空間を用意してあげれば、「勝ちにこだわるべき!」とか「楽しむことが大切!」といった大人側の議論は不要です。


戦術=強制?

「戦術を教える=強制」と捉える人も多く、「主体性や自ら考える力を奪う!」と力説する人もいます。

こちらも『ゼロイチ思考』の文化なのか「子どもが自ら考えることが大切」といった考えが広まってくると、「教えることは良くない」と考える人がでてきたり…

例えば、「〇〇の時は〇〇しろ!」は強制といえるかもしれません。

では、「〇〇の時はどうすればいい?」と選手に質問したとします。
この時、自分で考えて答えをだすには何が必要でしょうか?
頭の中に戦術の知識が一つもなかったとしたら…

ゆっくり時間をかけて…自分で戦術を生み出すことも大切な気が…

戦術を知っているのと知っていないのでは、「勝つためにどうすれば良いのか?」の答えを自ら考えて導きだせる時間・質・数に大きな差が生まれます。

漫画ドラゴンボールの『精神と時の部屋』でもあるのなら、ゆっくり時間をかけても良いかもしれません。
しかし、時間には限りがあります…

私は所属しているクラブチームで中学1年生の監督・コーチを務めています。
毎年、少年団やクラブチームの様々なチームから入団してきます。
最初のうちはそれぞれの個性を見たいので紅白戦をメインに行い、その時に「フォーメーションもポジションも自由に決めていいよ♪」と伝えます。

その時に「フォーメーションって何ですか?」とか「どうやって決めればいいですか?」と質問してくる子は一人もいません。
自分たちで話し合い、8対8の紅白戦であれば『1ー3ー3ー1』と決めたり、『1ー2ー3ー2』と決めるチームもいます。

当たり前のように決めるフォーメーションも立派な戦術の一つです。
ちなみに、『1ー1ー1ー5』と決めるチームは一つもいません(笑)
これはフォーメーションといった戦術をそれなりに理解しているからできること。
もしも選手全員から「フォーメーションって何?」とか「なんで決める必要があるの?」と言われた時は「精神と時の部屋!」となりますね…

戦術そのものは教えて、戦術の活用方法を学ぶ!

サッカーというスポーツは足でボールを扱うため、ミスが起こります。
また、ミスを起こさずにプレーできたとしても、100%の確率で得点したり失点を防げる戦術はありません。

だからこそ、先人の知恵をかりるべく最初は戦術を教わること。
次に、教わった戦術を頭で理解して、実行できるようになること。
そして、試合などを通して…

「どういった時にその戦術が効果的なのか?」

「その戦術の注意点は何か?」

「なぜ、その戦術が上手くいかなかったのか?」

などを学んでいくことが大切です。


戦術を教える際の注意点

なるほど…では、早々に戦術を教えていかねば!

小学生年代から戦術を教えることは必要です。

しかし、「小学生に戦術を教えるべき!」と意気込むのは危険!

肩の力を抜いて、以下の点に注意する必要があります。

  • Who (だれに?)
  • When(いつ?)
  • What(何を?)
  • Why(なぜ?)
  • How(どのように?)

Who(だれに?)
とめる・蹴る・運ぶのスキルはどのくらい?
大前提として、技術がないと戦術は成り立ちません。
例えば、5mのパスを正確に蹴れない選手たちに、幅50mのピッチ全体を使った戦術は無理難題といえます。
どのくらいの戦術理解度なのか?
2対1の少人数の戦術を理解できていないのに、多人数のチーム戦術を理解するのは難しいでしょう。

When(いつ?)
いつ戦術トレーニングを行うのかスケジュールを立てます。
プロの世界では「来週の対戦相手の戦術が〇〇だから、今週は〇〇の戦術トレーニングをする」ということがあります。
しかし、基本的に小学生年代では、試合で見えた自分たちの課題をベースに考えて、次の試合へ向け戦術トレーニングをするのが望ましいです。

What(何を?)
何の戦術トレーニングをするのか?
明らかにチームの課題がディフェンス面なのに、コーチが「バルサのようなパスサッカーがしたい♪」といって攻撃の戦術トレーニングをするのは良くありません。
勝つために戦術があるという本質を見失ってしまいます。

Why(なぜ?)
なぜ、その戦術のトレーニングをするのか?
ここが明確になっていないと、選手たちが目的を見失ってしまいトレーニング効果が薄くなります。
「前回の試合で〇〇が上手くいっていなかったね。だから〇〇の練習をしよう!」と練習の理由・目的を伝えるようにしましょう。

How(どのように?)
練習メニューとコーチング。
ここが指導者の頭をもっとも悩ませるもの…
メニューにしても、練習スペースが1m変わるだけで難易度や『出したい現象』が変わってしまうことも。
コーチングにしても、声がけの量と質、そしてタイミングによって選手の理解度が変わってしまいます。


まとめ

小学生に戦術を教える必要があるのか?

選手が勝ちたいのであれば、戦術は必ず教えるべし!

時間は有限です。
戦術以外にも選手たちは様々なことを習得するのに時間を割かなくてはいけません。

コーディネーション能力、ドリブルやパスの技術。
目に見える能力だけでなく、周りの状況を把握する『認知能力』。

最近では、これらを一つのトレーニングに集約する『インテグラル・トレーニング』が広がってきています。

しかし、こちらも『ゼロイチ思考』にならないように!

時には、単純なコントロールの反復練習(アナリティクス・トレーニング)も必要です。

ステップバイステップで、目の前にいる選手たちにとって必要かつ習得可能な戦術をトレーニングしてあげましょう。

 

最後に。

そもそも選手が「勝ちたい」と思っていないのであれば、優先的にその原因を探り解決しなくてはいけません。

[選手が勝ちたいと思っていない時の原因あるある]

  • 強い相手との試合ばかりで負けっぱなし…
  • チームメイト間のコミュニケーションが上手くいっていない…
  • 監督・コーチ、保護者から「勝ちたい」の強要…
  • そもそもサッカーが好きではない…

ちなみに、このような状況にある時に「楽しもう!」と促しても、きっと選手たちは楽しめないのは言うまでもありません。